赤血球数(RBC)
1.何がわかるか-----基礎知識
- 末梢の血液中の赤血球の増減を調べます。
- 多い場合は多血症や血液濃縮(脱水など)、少ない場合は貧血や出血を考えます。
2.異常値-----疑われる病気や異常
- 減りすぎている場合
- 増えすぎている場合
- 多血症:血が流れにくくなって、血管がつまりやすくなる。
3.どうすればよいか-----日常生活上の注意
貧血の場合
- どんな種類の貧血か、またその原因は何かを調べてもらいます。
- 貧血の種類の判定は、次のヘモグロビン濃度やヘマトクリット値と比較して行います。
- 鉄欠乏性貧血:最も多い貧血です。女性の10〜20%にみられます。赤血球数の減少より、ヘモグロビンやヘマトクリットの減少が大です。原因、特に男性では消化器からの出血の有無(がん、潰瘍など)を調べます。鉄剤の服用でよくなります。
- 悪性貧血:まれな貧血です。ビタミンB12や葉酸の欠乏により起こります。ヘモグロビンや赤血球数の減少がヘマトクリットより著しくなります。
- 溶血性貧血:まれな貧血です。赤血球が早く壊れることによりなります。赤血球数やヘモグロビン、ヘマトクリットの減少が同じ程度みられます。
- 再生不良性貧血:治りにくい貧血です。赤血球の他、白血球や血小板の減少がみられます。いずれにしても、詳しい検査が必要です。
- 最も多い鉄欠乏性貧血では、鉄分の多い食事(赤身の肉、ほうれん草など)を十分にとります。
赤血球恒数
- 赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値は、貧血の種類によって単独に変動することがあります。
これらの関係を赤血球恒数として、それぞれ、MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)、MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)を算出して、貧血の種類の診断に用いられています。
―赤血球恒数による貧血の形態学的分類―
貧血の分類 |
MCV |
MCH |
MCHC |
代表的貧血 |
小球性低色性 |
小 |
低 |
低 |
鉄欠乏性貧血
慢性出血性貧血
特発性門脈圧亢進症
慢性炎症性疾患 |
正球性正色性 |
正 |
正 |
正 |
溶血性貧血、再生不良性貧血
急性出血に伴う貧血
腎性貧血、血友病群 |
大球性 |
大 |
高 |
正 |
溶血性貧血
巨赤芽球性貧血(悪性貧血)
再生不良性貧血の一部
肝硬変症、粘液水腫 |
算出式: |
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MCV(平均赤血球容積):赤血球1個の平均容積 |
Ht(%)*10
RBC(100万)/mm3) |
基準範囲:81〜98
単位:fl(フェムトリットル) |
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MCH(平均赤血球ヘモグロビン量):赤血球1個に含まれるHbの量 |
Hb(g/dl)*10
RBC(100万/mm3) |
基準範囲:27.0〜33.5
単位:pg(ピコグラム) |
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MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度):赤血球1個に含まれるHbの濃度をw/v%で表したもの |
Hb(g/dl)*100
Ht(%) |
基準範囲:32.0〜35.0
単位:% |
多血症の場合
- 赤血球が男性600×104/mm3以上、女性550×104/mm3以上、ヘモグロビンは男性18g/dl以上、女性16g/dl以上、ヘマトクリットは男性55%以上、女性50%以上のとき、疑いをもちます。
- 実際に赤血球が増加している場合と、血液水分量が低下している見かけ上の場合があります。
- 原因には、原因不明なもの(真性)と、他の病気によるもの(二次性:心肺疾患、ストレス、腫瘍など)があります。詳しく調べてもらいましょう。
ヘモグロビン濃度(Hb)
1.何がわかるか-----基礎知識
- ヘモグロビンは赤血球に含まれ、酸素を運搬する働きをしています。
- ヘモグロビンの成分の鉄が不足したり、ヘムを作る能力が低下したりすると、ヘモグロビンは低下し貧血となります。
- 一般に増加は赤血球の増加に伴って見られます。
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2.異常値-----疑われる病気や異常
減りすぎている場合
- 鉄欠乏性貧血:鉄分の不足による。若い女性に多い。
- 病気やけがによる出血が原因の貧血:痔、胃潰瘍、子宮筋腫など。気付かないほどの少量の出血でも、長期に続くと貧血になる。
- 悪性貧血:ビタミンB12の不足。
- 再生不良性貧血:骨髄の造血機能の低下。
- 溶血性貧血:赤血球の寿命が短くなって、骨髄での造血が間に合わない。
3.どうすればよいか-----日常生活上の注意
赤血球の項を参照
ヘマトクリット値(Ht)
1.何がわかるか-----基礎知識
- 血液中に占める赤血球の割合を示します。
- 貧血があるとヘマトクリット値は低下し、多血症では増加します。
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2.異常値-----疑われる病気や異常
- 減りすぎている場合
- 貧血(貧血の種類の詳しい説明は、ヘモグロビンの項参照)
- 増えすぎている場合
- 脱水症状:全身の衰弱がひどい、飲食物を口からとれない、日射病、熱射病など
- 多血症:赤血球が徐々に増え、白血球や血小板も増えてくる(原因不明)。
3.どうすればよいか-----日常生活上の注意
赤血球の項を参照
白血球数と血液像
1.何がわかるか-----基礎知識
- 白血球は血液中で細菌を殺したり、免疫に役立ったりします。
- 白血球には、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球があります。
- 好中球は、感染症、火傷、心筋梗塞、出血、腫瘍、白血病などで増加し、特定の感染症(チフス、ウイルス)、敗血症、放射線照射、無顆粒球症、再生不良性貧血、エリテマトーデスなどで減少します。ときに、異常は見られないが体質的に常に多い人もいます。
- リンパ球の増加は、特定の感染症(伝染性単核症、百日咳、ウイルス症、肝炎など)、リンパ性白血病、バセドウ病、アジソン病などでみられ、リンパ球の減少は多くの感染症急性期、悪性腫瘍、副腎皮質ホルモン服用などでみられます。
- 好酸球の増加は、アレルギー疾患、寄生虫症、白血病、膠原病などでみられます。
- 白血球やその分画の測定は、これらの病気の発見の糸口となるものです。
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2.異常値-----疑われる病気や異常
- 増えすぎている場合
- 炎症:虫垂炎、肺炎、胆のう炎、膵炎、腎盂腎炎など
- 心筋梗塞
- 外傷
- 白血病
- 減りすぎている場合
- 膠原病
- 悪性貧血、再生不良性貧血
- 放射線や抗がん剤の副作用
- 白血病(急性の場合は低い傾向が多く見られる)
3.どうすればよいか-----日常生活上の注意
- 必要により再検査して確認し、原因の精査を行います。
血小板数(PLT)
1.何がわかるか-----基礎知識
- 血小板は、出血の時、血管壁の凝血に働き、出血を止める働きを持っています。
- 血小板数を計ることにより、各種の血液疾患の診断や出血しやすい人の原因解明に役立ちます。
- 血小板が増加する病気には、原因不明の本態性血小板血症、多血症、慢性骨髄性白血病、慢性感染症、出血、悪性腫瘍などがあります。血小板が減少する病気には抗がん剤の使用、再生不良性貧血、急性白血病、ウイルス感染、特発性血小板減少性紫斑病、アレルギー、肝硬変、血栓性血小板減少性紫斑病、播種性血管内凝固症(DIC)などがあります。
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2.異常値-----疑われる病気や異常
- 減りすぎている場合
- 血小板減少性紫斑病
- 再生不良性貧血
- 悪性貧血
- 白血病
- 肝硬変
- 抗生物質などの薬物の影響
- 増えすぎている場合
- 慢性骨髄性白血病
- 多血症
- 本態性・続発性血小板血症
3.どうすればよいか-----日常生活上の注意
- 必要により再検査して確認し、原因の精査を行います。
血清鉄
1.何がわかるか-----基礎知識
- 鉄は赤血球中のヘモグロビンなどに含まれ、重要な働きをしています。体は常に鉄を必要とし、血液中に一定量を含んでいるようになっています。
- 鉄の摂取不足が続いたり、出血(生理も含む)などで排泄が増大すると体の鉄分が不足し、血清中の量が減少してきます。
- 血清鉄が低下を示す病気には、次のものがあります。
- 鉄欠乏性貧血
- 悪性腫瘍、慢性炎症、慢性関節リウマチ、慢性腎不全
- 妊娠
女性では、生理による鉄欠乏性貧血が最も多く、男性では消化管出血や痔の出血による鉄欠乏性貧血が多く見られます。
- 血清鉄が増加する病気には、鉄が利用されない貧血(再生不良性貧血など)、溶血性貧血、ヘモクロマトーシス、慢性アルコール症、肝硬変などがあります。とくにアルコール摂取過剰とそれによる肝障害で多く見られます。
2.異常値-----疑われる病気や異常
- 減りすぎている場合
- 鉄欠乏性貧血
- 悪性腫瘍
- 慢性炎症
- 慢性関節リウマチ
- 慢性腎不全
- 妊娠
- やや増えている場合
- 増えすぎている場合
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3.どうすればよいか-----日常生活上の注意
- 鉄が低値であり、貧血があれば、原因を調べましょう。とくに男性では、消化管の潰瘍やがんの事もあります。
- 大きな病気がなく、摂取の不足が見られる時は、鉄分の多い食物(赤身の肉や魚、ほうれん草、レバー、ひじきなど)を多くとってください。
- 著しい低下で著しい貧血がある場合は、医師の指示にしたがって下さい。