2018年6月21日ライズヴィル都賀山で
「胃部X線検査によるピロリ菌除菌勧奨の除菌治療率について」
を、楠見職員が発表しました。
胃部X線検査によるピロリ菌除菌勧奨の除菌治療率について
一般財団法人 滋賀保健研究センター 楠見 慎司 樋口 洋介 植村 貴史
T.はじめに
近年、ピロリ菌感染により慢性胃炎(ピロリ菌感染胃炎)を経由して胃がんへ進行することが明らかにされている。そこでピロリ菌感染胃炎を早期発見し、早期除菌することにより胃がんリスクを低減することが勧奨されている。そこで当センターでは胃部X線撮影でピロリ菌感染胃炎疑いの受診者へピロリ菌の除菌勧奨をするシステムを2014年度より行っている。
U.目的
ピロリ菌の除菌勧奨システムにより除菌治療を受けた受診者の割合(除菌治療受診率)を調査することで除菌勧奨システムの効果を確認する。
V.対象と方法
調査期間は2014年4月1日から2016年3月31日までの2年間。
対象者は当財団が行っている事業所健診で2014年度と2015年度の両年度受診者で65歳までのピロリ菌除菌勧奨対象者(グループA)と2015年度と2016年度の両年度受診者で65歳までのピロリ菌除菌勧奨対象者(グループB)。
上記対象から判定通知が除菌勧奨+要精密検査以外(異常無し、有所見、要経過観察)における除菌治療受診率をグループごとに算出し比較検討する。
また、グループごとに男女別、年齢階級別の除菌治療受診率を算出し比較検討する。
W.結果・考察
表1.ピロリ菌除菌治療受診率(グループA)
表2.ピロリ菌除菌治療受診率(グループB)
表3.男女別、年齢階級別のピロリ菌除菌治療受診率
グループAの除菌率は、11.6%であった。グループBの除菌率は、22.2%であった。除菌率は、グループBのほうがグループAより有意に高かった。
男女別の除菌率は、グループA、B共に女性の除菌率が高い傾向にあった。女性のほうが男性より意識が高いと考えられる。また、グループBの39歳以下と40歳代の除菌率は、男女共にグループAの約2倍の除菌率となった。これは2015年度から除菌勧奨システムの文言を改訂したことと、ピロリ菌の除菌についての有効性が医療業界に浸透してきたものと考えられる。
X.結論
今回の調査でピロリ菌感染胃炎の疑いによる除菌勧奨システムは、効果が出始めた。よって若干ではあるが胃がん罹患率の減少に寄与することができた。
今後の課題は、除菌勧奨をしても除菌治療を受けない者がまだまだ多いことが問題である。今後もピロリ菌の早期除菌によるメリットを伝え、ピロリ菌除菌治療の早期受診を促せられるよう個人通知などに工夫を行い、胃がんのリスク軽減に寄与していきたい。
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